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◎マタイによる福音書10章29〜31節において、主イエス・キリストはこのように言われます。
「二羽の雀が一アサリオンで売られているではないか。だが、その一羽さえ、あなたがたの父のお許しがなければ、地に落ちることはない。あなたがたの髪の毛までも一本残らず数えられている。だから、恐れるな。あなたがたは、たくさんの雀よりもはるかにまさっている。」
◎人間に比べればはるかに価値なきものと思われる｢一羽の雀さえ｣神は限りなく顧みられるのです。
わたしたちの髪の毛までも一本残らず数えられているのです。わたしたちの日々は、そして今もこれからも、とこしえに神の顧みの中にあります。そのことをわたしたちは何よりも感謝いたしたく思います。私たちは神に覚えられているのです。
◎わたしたちは、自分のことについてよく理解していない面があるとはいえ、自分が価値少ない者であることを承知しています。そのような者を神がこれ程までに顧みてくださるのです。私達は謙遜の内にも、ゆるぎない確信をもって自分自身の無限の価値を覚えたく思います。そして全ての思い煩いを、自分自身と自分の愛する者に関わる全ての思い煩いを、主イエスの父にして私達の父なる神の御手に委ねてよいのであります。そして全ての思い煩いから解放されて、キリストにおいて示された神の御心が地になるために全身全霊を捧げて奉仕に生きようではありませんか。
◎今日の箇所でイエス・キリストは、「人々の前で自分をわたしの仲間であると言い表す者は、わたしも天の父の前で、その人をわたしの仲間であると言い表す。しかし、人々の前でわたしを知らないと言う者は、わたしも天の父の前で、その人を知らないと言う」と言われます。人々の前での私たちの告白、私たちの言動と思いとは神の前での言動であり、思いであるといわれるのです。すべてことが髪の毛一本までも数えていてくださる神の御前での出来事なのです。
◎ボンヘッファ−は獄中書簡において「われわれがキリスト者であるということは、今日ではただ二つの事においてのみ成り立つであろう。すなわち、祈ることと人々の間で正義を行うことです」
と言いました。彼においては神への祈りと人々の間での正義の実践は一つなのです。ユンゲルも言っています。「信仰に生きる者たちは、イエス・キリストについて一言も語らなくても、これを
しているのである。」牧田吉和氏は『改革派信仰とは何か』という書物の中で「改革派信仰とは、＜神の御前に＞徹底的に生きる信仰である」と言っています。
◎岩波ブックレットに金大中氏のスピーチと演説を集めた『和解と共存への道』というものがあります。その解説で池明観教授がこう書いておられます。アメリカに亡命した金大中氏をワシントンに訪ねた時の印象をこう語っておられます。「金大中氏はわれわれの考えをはるかに越えて思考していた。われわれは自分の職業にたずさわりながらせいぜい週二、三時間、韓国の政治について考えるに過ぎないといえるかもしれない。彼の場合は一日二四時間、それこそ夢のなかでも韓国のことを考えていた。われわれはそのことを知った上で運動を進めていかなければならない。」◎今日の御言葉は、私たちの一日二四時間が、否、この地においても天においても永遠にわたし達の命が御子を賜った父なる神の見守りの中にあることを保証していてくださるのであります。
わたし達の言動のすべて、思いのすべてが、神の御前での感謝であり、謙遜であり、讃美であり、
憐れみの証であることを覚え、そしてやがてそれが呼吸のようになることを目指しましょう。
（２００２年６月５日正午礼拝説教『イエスの仲間』マタイによる福音書10 :32 〜33より）
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